ヨ-クシャ-テリア                                                                      

スタンダ-ド解説

外貌一般
GENERALAPPERANCE
 長い被毛のトイ・テリアの外貌を具えていなければならない。被毛は完全に真直ぐで、体の両側に均等にむらなく垂れ、毛の分かれ目が鼻端から尾の末端までに通っている。
 ロングコ-トのトイ・テリアは、共通したコンパクト・タイプですべてにムダのない活動的な体構と性格を具えている。
 このイヌはこじんまりとして引き締まり、きわめてきちんとしている。身ぶりは真直ぐに立った時の姿は威厳のある態度をしめしている。KCの標準は「もったいぶった様子 important-lookinng」と表現している。全体のアウトラインはイキイキとした印象を与えており、釣り合いのとれた身体というものでなければならない。

頭部
HEAD
 どちらかというと小さい。頭蓋は突き出す丸い頭、ド-ムドヘッドと呼ぶタイプではなく、丸過ぎず、頭頂部は平らである。しかし、まったく丸みのないレベルヘッドでもない。口吻部(鼻端からストップの間)は平らで長過ぎることもなく、鼻端から後頭部までの
頭長のおよそ1/3ぐらいの長さがトイ・ドッグとしてのかわいらしさを表現するバランスだ。口吻が長くなればワ-キング・テリア的になるし、短か過ぎればフラット・フェイス(短く平らな吻の顔)的となり精気と活動性を欠く。KC標準は長過ぎない口吻と記載してある。口吻の構成はあくまで頭蓋と釣り合ったもので、口先が貧弱に尖ったスニッピ-・フェイスでも、口先が四角いブロッキ-・マズルでもない。口唇は引き締まり、正面も側面も清楚なものでなくてはならない。口唇のゆるんだ締まりのない口元、リッピ-マウスや歪んだ口元、ライ・マウス及び鼻鏡の下の上口唇の溝が短く上の切歯の露出するものなどは顔の正面を見苦しいものにするため大きな欠点とされる。顔面部では、頬部は平らであり、頬骨弓が張った幅広い頬は頬張り顔、チィキ-・フェイスまたは頭蓋幅過広、スカリ-と呼んで欠点となる。

額段(ストップ)
STOP
 鼻梁と前額部の境となる部位で、日本では落こみともいう。ちょうど左右の目頭の中央にあたる部分だ。このストップは決して険しくなく、ただし明確に示されていなければならない。コリ-のような不明瞭なもの、また逆にコッカ-・スパニエルのように明確過ぎるものも好ましくない。KC、FCI共に標準書では触れられていないが、大変にその位置、構造は顔貌審査の大きなポイントとなる。

顎/歯
JOWE/TEETH
 FCIには「完全で規則正しいシザ-ズバイトである。歯は顎に対して垂直に、きちんと生えている」とあり、KCは「口・・・完全に平らで、歯はできる限り健全である。たまたま事故で歯を少しでも失った犬でも両顎が平らであるならば、欠点としなくてもよい」とある。以上のように両ケネルクラブともに、歯については作業犬種と比較すればその扱いは寛大だ。KCの”完全に平らで”とは歯並び、すなわち歯列が正しいことで、顎から垂直に発生していることを意味する。またFCIの「正しいシザ-ズバイト」とは、正常な鋏状咬合で、下顎切歯の外側と上顎切歯の内側がわずかに触れ合う咬み合わせで、深く咬み合った場合は過蓋咬合または過深咬合と呼び、シザ-ズバイトを正常とする場合は好ましくない。また切歯が斜め前方に突き出す”屋状咬合”及び上下の切歯間に前から見て隙間のあく”離解咬合”は好ましくなく、露舌の原因となる。欠点については深く触れていないが、切歯(前歯上下6本ずつ)犬歯上下で4本。第二前臼歯から後の第三、第四前臼歯及び後臼歯、上顎ならば第一、下顎ならば第一、第二後臼歯があるならば上下ともに第一前臼歯、上顎の第二、下顎の第三後ろ臼歯の欠歯(先天的に歯が萌出しない)は、問題にして減点対象とならないのがトイ・ドッグの常識だと考える。もちろん永久歯42本が揃っていれば最良とするべきだが、ヨ-キ-を含む超小型犬の場合は、困難な問題だと思う。KC標準の「事故で失った歯」とは脱落歯(抜け落ち)、破損歯の事で、これは顎が健全であるならば減点対象としないと明記している。これは後天的なもので遺伝的なものではないためだ。
 しかし、反対咬合(アンダ-ショット)、被蓋咬合(オ-バ-ショット)は不正咬合として重大な減点となり、著しい場合は失格となる。歯や骨のように硬い組織の形質は優勢に遺伝するので、両親をはじめとする系統の歯質には充分な調整がひつようだ。
また、ヨ-キ-の場合、乳歯から永久歯の脱換できるものは少なく、放置すれば両者の二重な存在、乳歯遺残症となり、口腔疾病のみに留まらず、いろいろな病気の原因となるので、生後8か月までは歯のチェックは欠かせない。これはトイ・ドッグの宿命といわざるを得ない。獣医師による検査は必要だ。

鼻、鼻鏡、鼻平面
NOSE
 鼻鏡は顔面部と釣り合った大きさで、突出することもなく短吻種のように上反りすることもない。鼻孔は広く呼吸を楽なものにしている。鼻の皮膚(結胝組織)はきめ細かく漆黒でなければならない。鼻鏡の赤いものダッドレ-・ノ-ズ(dudley nose)及び班鼻、バタフライ・ノ-ズ(butterfly nose)はきわめて大きな欠点とされる。ただし、例外はあり、分娩後のメスの鼻の色、黒くあるべき色が真冬にわずかに赤っぽくなっている場合は、その程度にもよるが、これはウインタ-ノ-ズ(winter nose)と呼び黒く復元するものと予想できる場合は、減点対象としない。これは古くからのあらゆる犬種においても通用するドッグショ-の常識だが、幸いヨ-キ-の場合はきえあめて稀にしか見られない現象だ。


EYES
 KC標準は「中位の大きさ、暗色、きらきらと輝き、鋭い知性的な表情で、直接に前方を見るような位置にある。目は突き出ていてはならず、瞼の縁は暗色でなければならない」とある。FCI標準もこれに準じている。
 冒頭の「中位の大きさ」とは、頭部や顔面部とのバランスの問題で主観的なもので、大きくも小さすぎる事もなくちょうどよい大きさという意味で、特に大きな出目、バルギング・アイ(bulging eye)はヨ-キ-の頭部、また全体感から見ても不釣り合いで、品格を著しく落とす。また逆に小さ過ぎ、眼球を納める頭骨のくぼみ、眼窩(オ-ビット)に深く位置する目も険しい表情となり、トイ・ドッグの可憐な表情を損ねてしまう。形は卵型の外観、オ-バル・アピアレンスだ。目の色(虹彩の色)は暗い色(ダ-ク・イン・カラ-)とある。淡明な色合い(ライト・アイ)は好ましくなく、薄茶色(ヘ-ゼル・アイ)、青磁色(ワ-ル・アイ)は好ましくない。黒っぽいくらいの色が好ましい色。
 眼球の位置は両眼が前方に向かって並んで、その位置は広く離れている。グレ-ハウンド型の長頭犬種のように頭の脇に位置するものではない。視野は広くはないが、近くの物体の奥行などの認定には便利で、近くの飼い主の顔の表情を確実に把握することのできる構造だ。
 目の縁(眼瞼縁)は色素が沈着して黒に近い暗色でなければならない。パッチリとした目、フル・アイを引き立たせるためにも眼瞼縁は濃色でなくてはならない。目の表情はテリア的で鋭く機敏なもの、バ-ミント・エキスプレッションであることがテリアと名のあるイヌの気質を表現している。

耳(耳介、耳翼、耳朶)
EARS
 KCの古い標準では、立耳もしくは半立耳とあったが、現在では半立耳が除かれ、立耳、エレクト・イヤ-(erect ear)と改訂された。KC標準書は「耳・・・小さいV字形で、立てて保持し、広く離れず、短い毛い覆われ、色は非常に濃いリッチ・タン(very deep ,rich tan)としている。"広く離れず”とは頭蓋の最も幅広い部に位置しますが、直立していて、側方に向って立ちパピヨンのように蝶が羽を広げたような斜めの保持だけではなく、頭蓋から真直ぐ上に垂直な保持でなくてはならない。V字型とは耳先が尖ったもので、スピッツ属のように耳介軟骨が硬く厚いことは要求していない。
 耳の毛色は体中のどの部分よりも濃いタン色でなくてはならない。先天的に耳介が大きく軟質見られるパピ-は、生後6週齢ぐらいに耳の毛を短くクリップして刺激し、しっかりしたしっかりした立耳になるような補助を勧める。

頸部
NECK
 KC標準は「NECK・・・Good reach」充分に達する首、とあるが、これは充分な長さの首と解釈する。そして肩から上に揚げて保持し、頸背部の筋が発達してア-チ状となるタイプの首、ア-チド・ネック(arched neck)だ。短い首、頸背部の肉が落ちて雌羊の首、ユ-・ネックのように弱々しいものは好ましくない。

前躯
FOREQUARTES
 「肩は充分に発達して後方および、胸はかなり深い。」とある。これは肩甲骨がよく横たわっていること。胸深は肘と並ぶくらいまであることを望んでいる。「前肢は真直ぐでしっかりしている。」これは前肢はあらゆる方向から眺めても直状で、湾曲したり捻れたりせず、足(趾)は前方に爪先を向け、指は緊密に握っていることを意味する。

胴(ボディ)
BODY
 ボディはコンパクト(小さくまとまっている)背線水平で腰は強健で、肋はよく張っている。背線は真直ぐで、車輪背ホイル・バック(wheel back)、凸背でも、弛む背スラックン・バック(slacken back)でもなく、背筋は発達して強靭な表現が、立姿時も歩行時においても見られなくてはならない。

後躯
HINDQUARTERS
 後躯とは、骨盤(後肢帯)を含む大腿部、膝関節、下腿部、足根関節、中足部、趾部を含む部位をいう。通常、後肢と呼ぶ。
 後ろから見て真直ぐで、左右は正しく平行している。各関節は健全で、強靭な靱帯に支えられ、その運動は自由で推進力の根幹となっている。大腿骨、下腿骨は長く、飛節(足根部)はよく乾燥して明確な形を示している。長骨(大、下腿骨)の長さが適正で、結合角度が正しい場合、座骨端からの垂線は趾跣(爪先)に触れる。後望してX状になったり、O状に見えるもの、側望して後肢の角度不足のため直状とストレ-ト・ホックド(straight hocked)とともに重要欠陥となり、歩様に乱れを生じる。


TAIL
 KC標準では、「習慣的に切る customary docked」と示し、「中位の長さに切る。毛は豊富で、色は体の他の部分におけるよりも暗いブル-(darke blue in colour)で、とりわけ尾の末端ではそうであり、背の平面(level of back)よりもわずかに高く保持する」とある。断尾は普通、生後3~7日以内にされるが、短く切り過ぎた尾は取り返しがつかない。ヨ-キ-は極短尾(bob tail)のイヌではないので、この点には犬種の特性に通じた方の意見を参考にするべきだ。

被毛
COLOUR
 KC標準では、「ボディの毛はほどよい長さで、完全に真直ぐで、(not wavy,ウェ-ブしていない)絹のように光沢があり、毛質は繊細な絹糸状(fine silky texture)である」。FCI標準書は「ボディの部分はかなり長く、完全に真直ぐで(ウェ-ビ-でない)、光沢がある。立派な絹糸状の毛質であり、ウ-リ-(羊毛状)でない。中略」とあり、その本意は同じ。毛が細く、しなやかで、薄い高級な絹織物のように滑らかで腰があり、羽二重のような艶と手触りでなければならない。重要視される毛色の完全性は、完全な毛質のみに求められるものだ。
 被毛の状態は外毛(オ-バ-コ-ト)でけの単層毛シングルコ-トだ。犬科の標準的な外毛と下毛のある二重層毛ダブル・コ-トではない。人の衣に例えるならば、絹布の一重のものを羽織ったのがヨ-キ-だ。
 体中の被毛は、毛髄が発達悪く体の末端部の毛では毛髄を欠く。このような被毛状態のため、毛によ穂温性は極めて貧弱だ。また毛周期は原始的な毛状のイヌと異なり、季節的な換毛はなく、毎日少しず脱換する随時な換毛で、二年近く伸び続けたという報告もある。人による動物の改良すなわち育種は、動物の本来の生態や生理を変化させる。改良の進んだ緬羊では、8年間も毛が伸び続けるのを当然としている品種があるほどだ。

毛色
COLOUR
 KC標準書では、「暗い(ダ-ク)スティ-ル・ブル-(シルバ-・ブル-ではなく)が、後頭骨(すなわち頭蓋の後背部)から尾の付け根までにおよんでおり、どんなことがあってもフォ-ン、ブロンズもしくは暗色の毛が混ざっていてはならない。タンの毛はすべて根元のところが中程よりも色が暗色で、先端ではさらに一層明るいタンの色合いになっていなければならない」

 * スティ-ル・ブル-(steel blue)
   鋼鉄色、鋼色には暗濃スティ-ル・ブル-(dark steel blue)と明るいシルバ-ブル-とがある。

 * フォ-ン(fawn)
   濃い鹿色または、やや赤褐色に栗茶色チェストナット・レッド(例:アイリッシュ・セタ-の毛色)までのバラエティ-がある。

 * ブロンズ(bronze)
   青銅色。唐金色とも。全体が暗明で、毛先がわずかに赤みがかった錆色の毛。日光にさらされて黒い毛が焼けた色。

 * タン(tan)
   黄褐色。タンにも濃淡があり、濃いものをリッチ・タン、薄いものをライト・タンといい、この中にはクリ-ムと呼びたいほど淡明なものがあり、その色の範囲は広い。

 額(前頭部)の毛に、成犬で、黒や灰色の毛が混ざってはならない。耳のタンは体のどの部位と比較しても濃いタンでなくてはならない。頸、背部はスチ-ルブル-で、赤、白の差し毛が混ざってはならない。そのたの部分はリッジタンで、下肢はいくぶん明るい色合いとなるが、白い指は欠点となる。これは成犬の毛色に求められる条件で、加齢に伴い毛色は変化していく。

歩様
GAIT
 FCI標準書には「推進力があり、自由な動きである。前後(脚)ともに真直ぐな動きで、トップライン(背線)を水平に保つ」。ドッグショ-でのアクションは、速歩で審査される。その推進力の60%は後躯によるもので、前肢の主な役割は、進む方向を決める体重の負重だ。ヨ-キ-はダブルトラッキング(複線歩行、体の真直ぐ前に出す歩き方で、前後肢とも内寄り、外寄りに出す歩様ではない)。ただし、歩幅をいっぱいに広く歩くときはわずかに体下の正中線に足は近づくが、単線(シングル・トラッキング)になったり、左右の前肢または後肢が交差するクロッシング・オ-バ-であったり、歩くたびに足を外側に曲げる運動が見られるパドリングは大きな欠点あり、歩幅が広い安定した歩様で、一言で流れるような歩様と表現されるレベル・ゲイトだ。
 また、脚をまげて地表より高く挙げるハクニ-・アクション、前後同側の脚を同様に出すペ-ス(側対歩)も、もちろん欠陥歩様となる。
 バランスのとれた安定した歩様はム-ビング・ストレ-トと呼ぶ。姿勢的には頭部を高く保ち、首の上下反動がなく、背を水平に保ち、尾を背の水平よりやや上向きに保ち、楽しげに快活に歩くものでなくてはならない。静止時に発見がしにくい体の構成上の欠陥、気性、体質などの美格、欠陥も歩けばはっきりと現れる。そのため犬ばかりではなく、あらゆる家畜の体構審査には歩様検査がされないものはない。

大きさ
SIZE
 KCは3.2㎏、FCIは3.1㎏まで、と体重のみ表記され、体高の指定はない。理想サイズ5ポンド(2.27㎏)とされている